カイトサーフィンで可能な走行方向のおおよそを図にするとこうなる。ヨットやウィンドと同じものである。
クローズドホールドは風上に向かって45度までという理論値があるらしいが、私はよく分からない。確かにディンギーやウィンドでフルダガー(ダガーボードを一杯に下ろして横流れを最小限に止めること)にすると、45度に近い角度まで上ることができる。
しかし、ダガーボード(センターボード)を持たないカイトサーフィンの、しかもツインチップのように小フィンで、板自体を水中に立てること(水中側面抵抗)で横流れを防ぐ方法ではせいぜい30度辺りが限界ではないだろうか。実際、GPSの走行軌跡を分析すると、私が使っているような当たり前のツインチップの場合、15度~20度辺りで上っていることが多い。
面白いのは、カイトサーフィンの用語では、アビームより風上に向かう場合は全て「
アップウィンド」、風下に向かう場合は「
ダウンウィンド」と呼び、航空分野での使い方と同様であるということだ。
また、揚力(動力)発生源をセール(帆)ではなく、ウィング(翼)と呼び、海陸風(かいりくふう)の海風をサーマルと呼ぶことなどをみても、このスポーツが海上のセーリング(帆走)分野からではなく、主にランドカイト(陸上での凧揚げ)分野から派生してきたものであることを伺(うかが)わせるに充分だ。
19世紀末、現在のハンググライダーに似た滑空翼で2000回以上の飛行データ(揚力と抗力の関係)を積み上げたドイツのリリエンタールの出発点も、それらのデータを礎(もと)にしながら安定した動力飛行を成功させたアメリカのライト兄弟の試みも、カイトの力学的分析から始まっているのである。多くの人が認めるように、カイティング(凧揚げ)は航空の歴史の原点というべきものでもある。
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