内容はカイトに限らず種種雑多です。好みの選択は「カテゴリー」をご利用下さい。日本語訳は全て寛太郎の拙訳。 2010年10月18日設置
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ある一点に複数の力が作用すると合力が生まれる。空の滑空でも海の帆走でもカイトサーフィンの走行でも、この合力の働き方を飲みこんでおくと後の話の消化が良くなる。
次に出てくる合力の話の前に、まずは「進行風」から。「進行風」は「見かけの風」と呼ばれることもあるが、「見かけは立派だが内容は低劣」などという世間の「見かけ」と異なり、カイト翼に実際的に働く風は単なる風向・風速ではなく、この見かけの風・進行風である。内容は図の通り。
翼に働く決定的な合力を作り出す2つの力(分力)は、空の場合は“揚力”と※“重力”、カイトサーフィンの場合は“揚力”と“踏ん張り力”。“踏ん張り力”なんて言葉は私しか使わないが、板の「水中側面抵抗」などと言うよりずっと分かり安いだろう・・・と思う。
まず空の話をする。「飛行翼がどうして滑空できるか」が分かれば、“重力”を“踏ん張り力”に置き換えるだけで「カイトサーフィンがどうして走行できるか」も即座に分かるからだ。
何にしても避けて通れないのが“揚力”の問題で、少し立ち入れば「揚力係数」だの「大気密度」だの「対気速度」だの「迎角」だの「なんとかの法則」だの、それぞれがそれなりに面白い話がゾロゾロ出てくる。
しかしここでは、図に示すように揚力は進行風と垂直方向に働くということさえ知っておけば充分。この揚力線と重力線を隣り合う辺とする平行四辺形の対角線が合力線になる。
そして、各線分の方向を変え目盛りを打って変数を与えてやれば、合力の“向き”と“強さ”が決まり、この力が存続する限り、翼は滑空を続けカイトサーフィンは走り続けることができるということになる。
※大空を自由に飛ぶという人類の長年の夢を実現するのに、常に大きな障害となるのが「重力」だ。ところが実は、重力がないと「浮遊」はありえても滑空や通常の飛行はありえない。18世紀フランスのモンゴルフィエは本格的な滑空や飛行の歴史以前に、バルーン(熱気球)による浮遊を成功させている。
いつものように用語(言葉)の意味(定義)から始める。小学館の国語大辞典には、理論とは「ある物事に関して、原理・法則をよりどころとして筋道を立てて考えた認識の体系。また、実践に対応する純粋な論理的知識」とある。分かりやすい定義だ。特に「実践に対応する・・・」は大切だと思う。
私たちが生き行動する現実の世界や自然界は常に具体的なものだが、人間の頭はややもすると具体を離れて抽象に走る。実践を伴わない抽象的理論をいわゆる「空理空論」と呼び、それはそれで楽しい人間的営みかもしれないけれども、私はあまり好まない。
カイトサーフィンの実践(現実)は、水面を風よりも速く滑走し、時に波に乗り、時にジャンプし空中を滑空する。それに対応して板(ボード)や身体を動かすことで、様々な運動形態が生まれる。その多様性は、同じように風の力を利用する帆走スポーツや航空スポーツと比べて驚くほど豊かなもので、この多様性や自由度の大きさが、このスポーツ特有の醍醐味だと言って良いだろう。
さて、「カイトサーフィンはなぜ走るか」について・・・その手の入門書は巷間(こうかん)に数多いだろうし、WEB上にも丁寧なサイトがある。同じようなことをダラダラ書くのも退屈なことなので、まずは、ウィキペディアの該当項目をリンクする。
ここではカイトサーフィンの概要や変遷、基本構造、流体力学上の揚力などについて詳しく解説してあるが、この著者は相当に謙虚な人と見えて、カイトサーフィンに働く力学はウィンドサーフィンなどでは使える従来の縦帆理論や揚力を中心とする航空理論では充分でないだけでなく当てはまらないことが多いとしている。
この姿勢は正しいと思う。彼はその例として角速度の問題や板の水中側面抵抗を挙げる。更に付け足すと、カイトサーフィンに働く力として無視できないものに、20m以上にも及ぶサスペンションラインの張力があり、一部のラムエア翼のように迎角(むかえかく・アタックアングルとかAoAとも言う。よく使う“ピッチ角”を正しく表現したもの。違いは後ほど説明)の変化が翼の曲率と連動して翼面積(投影面積)が変化するようなものもある。
これら考えられる全ての要素を同時に関係付けながら、カイトサーフィンの走行理論を組み立てることは実際上不可能だろう。ところが、こんなことをまったく知らなくても、着実に練習を重ねていけば、必ず、風よりも速く水上を走り、数メートルを超える高度をジャンプし滑空できるようになる。これが、「身体はやがて全てを理解する」ということである。
※ピッチ角とは翼弦線と水平線の成す角度。迎角とは翼弦線と進行風の成す角度。翼弦線とはリーディングエッジの先端とトレーリングエッジの先端を結んだ直線。めんどくさい話だが、図で見れば一目で分かるので、近いうちに下手な絵を描いてUPする。↓(ウィキペディアの画像に手を加えた)
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