今日は良く吹いた。完全にオンショアだが比較的安定した北風で50kmほど走った。はるか沖で淡々とディレクショナル・スタイルを楽しんでいるF君はもっと走っている。M君も久々に風に吹かれて幾らかはリフレッシュしただろう。今週は仕事の徹夜続きで大変だったにちがいない、彼には珍しく2時間ほどで切り上げた。懸命な判断だと思う。
陸・海・空を問わず、道具を使って行う全ての活動において、自己管理(人)は機材(道具)や環境と並び、安全管理の要素の中でも最も大切なものだ。しかし、自分の身体や心はあまりに身近で見えにくいという面もあり、ややもすると無理を強いてしまうことがある。
「人」と「機材」と「環境」・・・空の世界で私はこれを「飛行のための三要素」と呼んで教習活動や自分の飛行形態を決める際には必ずチェックすることにしていた。そもそも、この三つの要素の一つでも欠ければどんなフライトも成立しない。飛行機材や飛行環境はもちろんのこと、優れたインストラクターは教習生のその日のコンディションをかなり正確に見抜く目を持っている。
余談だが、「パイロット一年目の危機」というのがある。団体によって多少の違いはあるが、スカイスポーツの教習課程は幾つかの段階を踏みながら技能の向上を図ることになっていて、イントラの指導や誘導を必要としない「一人前」の飛行家=パイロットになるには早い人でも1年近くかかる。飛行経歴に加えて実技や学科試験もあるから、初心者にとって「パイロット」という資格は、最大の目標であり憧れでもある。
ところが、教習中は事故と無縁の初心者パイロットが、たいがいは一年以内に相当な割合で大小の事故を起こすという事実があった。それは教習活動の宿命とも負の側面ともいうべきもので、痛い目にあった初心者パイロットの多くはそのとき初めて、何かと不自由な教習中は、経験豊かなイントラのきめ細かい観察や胃の痛くなるような指導を存分に享受していたのだ・・・ということに気が付く。
もう一度言うが、これはこの種の
教習活動の宿命とも負の側面とも言うべきものだ。逆に言うと教習活動がなければこういうことは起こらない。私の知る限りでは、優れたインストラクターの多くは自ら試行錯誤を重ねながらその草創期を生き延びてきている。つまり、誰かの教習を受けて自己の技能を築き上げたのではない。興味深い逆説ではないだろうか。
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