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寛太郎のカイト日誌

内容はカイトに限らず種種雑多です。好みの選択は「カテゴリー」をご利用下さい。日本語訳は全て寛太郎の拙訳。 2010年10月18日設置

   

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先入観と事実

今日の暑さは格別だった。たぶん沖縄沖の台風が東から張り出す太平洋高気圧の熱気を巻き込んでいるのだろう。堀江は9時を過ぎた頃から北東順風が入り始め、10時前の時点で事務所の温度は私の頭の限界温度に迫っていた。これはもう、午前中だろうがなんだろうが出かけるしかない。

空は完璧な夏色。北東風6~8mに10m近いブローが混じる。15㎡でも19㎡でも走れる風だ。ゆったり跳べる19を選んだ。インフレカイトの皆さんには、なかなか分かってもらえないのだが、私が使っているラムエアカイトは、とんでもなくオーバーに強いのである・・・というよりも、オーバー気味の方が楽に乗れるのである。

その理由は幾つかあり、私の観察を一つ二つ述べると、まず、①:滑空性能の違い。カイトを滑空翼としてみた場合、ダブル・サーフェイスでアスペクト比が高いラムエア翼は、滑空性能そのものが優れる上に、ピッチ角(正確にはAoA:迎角)を比較的に(インフレと比べて)大きく下げても翼表面の気流が乱れにくい。

水上走行中は、カイトを水面近くまで落とし、板を立てて、水中側面抵抗を有効に利用してもしなくても、なにがしかの揚力によって、なにがしかの重量が失われるので、速度を決定する一大要因である翼面加重が減少する。これが高じて、ボードを抑える縦の力が減衰し、カイトコントロールも含めた水上走行やまともなジャンプなどが困難になった状態を、いわゆるオーバーと呼ぶのだが、ピッチ角(AoA)を大きく下げてもカイトの挙動自体が不安定にならない限り、その許容範囲は広くなる。

次に、②滑空速度の問題・・・これはインフレでも似たようなことが言えるのだが、例えば私の体重70kgでの19㎡のカイト翼の滑空速度は、ピッチトリムを全く使わなくても、恐らく時速50km辺りだろう。これを秒速に換算すると14mの速さになる。つまり、少なくてもジャンプの最中、カイトを中天に位置し、バーを引き込んでAoAを上げない限り、10mやそこらの風では、風下側に飛ばされることはない。逆に風上側へのオーバーシュートを抑えるの注意する必要がある。

その点、インフレ翼の多くは自重の大きさと共に角速度の変化がラムエアより大きいのが普通だ。これがインフレ翼の長所でもあるのだが、オーバー・コンディションでは短所として働く。運動エネルギーは「質量×速度の二乗」で決まり、その運動エネルギーの変化がラムエア翼よりも容易に起こるのだから。

私がこれまで使ったカイトで比較すると、カブリナ・クロスボーの13㎡のインフレ翼で気持ちの良い風域が、だいたい現在使っているラムエア翼の19㎡の適応風域と一致する。私の先入観は、ラムエアはインフレよりもアンダーに強い・・・というものだったのだが、事実は全くの逆であった。やはり、本当のことは、実際に、可能な限り自分で検証してみないと分かること少ない・・・ということだろう。

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プロフィール

HN:
寛太郎
性別:
男性
職業:
self-employed
趣味:
風読み・読書・自転車ほか多数
自己紹介:
瀬戸内の小島生まれです。学生時代は国際法を少し。数年間の堅い団体職の後、子供好きが高じて学習塾を、風が好きでスカイスポーツのイントラを、等と趣味と仕事が重なる生活を数十年経験しました。55歳引退計画に従って現在は基本的にフリーですが、相変わらずあれこれ忙しくしています。

生活方針は「無理をしないでゆっくりと」およそ中庸を好みます。東西を問わず古典思想の多くに心惹かれます。まずは価値相対主義を採用し事物の多様性を愛しますが、ミソとクソを同等にはしません。モノゴトには自ずと高低浅深があり、その判断基準は「大自然の摂理と全ての生命(いのち)の幸福」の中にあると思います。敬愛する人物は古今東西少なからず、良寛やB・ラッセルを含みます。

ナチュラリストと呼ばれることを好みますが、人間が創り出した道具類にも大きな関心を持ちます。人間語だけでなく、あらゆる生き物たちの「ことば」に興味が尽きることはありません。60~70年代ポップスや落語を聞いたりすることも好きです。

・著作:『空を飛ぶ・一つの方法』
・訳書:『リリエンタール最後の飛行』
・訳書:『個人と権威』

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