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寛太郎のカイト日誌

内容はカイトに限らず種種雑多です。好みの選択は「カテゴリー」をご利用下さい。日本語訳は全て寛太郎の拙訳。 2010年10月18日設置

   

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金(かね)と金(きん)

「金(かね)になるだけが仕事ではない」・・・あの有名なTVドラマシリーズ『北の国から』の最終話「遺言」の一シーンで、生来ナチュラリストの倉本聰が、唐十郎演じる北国の漁師・トドおやじに語らせた文句だった。

あれからもう10年も経つのか・・・私はこのシリーズを、その構成において、配役において、そして根底を流れる思想性において、日本TVドラマ史上、最高傑作の一つだと思っている。想いを同じくする方々も少なくないだろう。

そして、さらに私は思う。「金(かね)になるだけが仕事ではないのは無論、真に優れた仕事はやがて必ず金(きん)になる」

こないだNHKの番組で、スペイン・アルタミラ洞窟の動物壁画をあらためて観た。最近のTV映像は急速な技術革新のおかげで、以前よりずいぶん鮮明に鑑賞することができる。Reproduction_cave_of_Altamira_01s1024pix100kb.jpg

はるかな過去の石器時代に、単なる物品交換の便を図るための貨幣なんてものは存在しなかった。もちろん現代のバカに複雑な貨幣制度やお金(かね)なんてものも。かの人物は、何らかの報酬を得るためではなく、純粋な楽しみ喜びのために、この大作を描いたにちがいない。

しかし、ピカソをして「こんなスゴイ絵画は現代の画家にはとても描けない!」と言わしめた、驚くべく優れた仕事がそこにあった。万年を経ても決して朽ちることのない金(きん)のような仕事。

ところで、仕事の和読みは「仕(つか)える事(こと)」だ。ヒトが自分以外の何か誰かに仕(つか)えるためには、上下・高低の身分的な階層が条件になるのだが、そういう社会構造が発達するにつれて「仕事」という概念も定着したことは容易に推定できるだろう。

もっとも、仕える対象がもっと形而上(けいじじょう)的な、普通の目には見えない世界、あるいは、自分の好みの世界である場合は、話しが大きく違ってくる。生業(なりわい)が趣味になっている人、趣味が生業になっている人などは、わりあい稀(まれ)なこの種類だ。

英語でワーク(work)とビジネス(business)が区別されて使われるのにも、それなりの歴史的背景があり、workはwalk(歩く・動く)が源であるに比べて、businessとはbusy(忙しい・手がふさがっていて他に何もできない)の派生語にあたる。

日本語にも「働(はたら)く=人が動く」という言葉が古くからあり、漢字の成り立ちとしても「忙」は「心を亡くす」ことが原義だ。このあたりも分かりやすく符合していて面白い。

世間がどんなに不景気になって、いわゆる「仕事」がなくなっても、ヒトは生きて、好きなことで体や頭が動いている限り、「働(はたら)く」のを止めることはあり得ないのである。


 


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プロフィール

HN:
寛太郎
性別:
男性
職業:
self-employed
趣味:
風読み・読書・自転車ほか多数
自己紹介:
瀬戸内の小島生まれです。学生時代は国際法を少し。数年間の堅い団体職の後、子供好きが高じて学習塾を、風が好きでスカイスポーツのイントラを、等と趣味と仕事が重なる生活を数十年経験しました。55歳引退計画に従って現在は基本的にフリーですが、相変わらずあれこれ忙しくしています。

生活方針は「無理をしないでゆっくりと」およそ中庸を好みます。東西を問わず古典思想の多くに心惹かれます。まずは価値相対主義を採用し事物の多様性を愛しますが、ミソとクソを同等にはしません。モノゴトには自ずと高低浅深があり、その判断基準は「大自然の摂理と全ての生命(いのち)の幸福」の中にあると思います。敬愛する人物は古今東西少なからず、良寛やB・ラッセルを含みます。

ナチュラリストと呼ばれることを好みますが、人間が創り出した道具類にも大きな関心を持ちます。人間語だけでなく、あらゆる生き物たちの「ことば」に興味が尽きることはありません。60~70年代ポップスや落語を聞いたりすることも好きです。

・著作:『空を飛ぶ・一つの方法』
・訳書:『リリエンタール最後の飛行』
・訳書:『個人と権威』

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