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寛太郎のカイト日誌

内容はカイトに限らず種種雑多です。好みの選択は「カテゴリー」をご利用下さい。日本語訳は全て寛太郎の拙訳。 2010年10月18日設置

   

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言葉が輝くとき

「私たち日本人にいちばん欠けているものは何か、といいますと、自分が独りでこの地上に生きている、たった独りで生きているのだという自覚ではないでしょうか。」
辻邦生 『言葉が輝くとき』middle_1187945045.jpg

辻は加藤周一の6年後輩にあたるが、加藤同様、フランス文学者の渡辺一夫に師事している。辻は仏文専攻だから当然。加藤は医学部であったにかかわらず、仏文教室に出入りして渡辺から大きな影響を受けている。

彼は学生時代に急性肝炎で生死の境から蘇り、楠(くすのき)の新緑の輝きに包まれて、「死を見つめ、感じたときに、かえって生きているという誰にも当たり前の平凡なことが、突然考えられないくらいすばらしいものである」ことに気づく。

「いよいよ退院となって、ちょうど5月でしたが、東大病院を出て、大学の構内を歩いていましたら、大きな楠がたくさん茂っているのですね。楠はちょうど燃え立つような新緑です。この緑の輝きの美しさに、これが「命」なんだと感動し、その時初めて生きているって本当に嬉しいことなんだと思いました。そして、この嬉しさは「死」というもの、自分が死んでこの世からなくなってしまう、一人ぼっちでお墓の中へ入ってゆく、そういうことと裏腹にあるということに気づいたのです。」

人間は、否応なく、たった独りで生き死にする実存であり、深く深く見詰めてみると、その在り方が実はとんでもなく素晴らしいことであるということ。この体験感覚がその後の彼の生き方の基調となったに違いない。
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プロフィール

HN:
寛太郎
性別:
男性
職業:
self-employed
趣味:
風読み・読書・自転車ほか多数
自己紹介:
瀬戸内の小島生まれです。学生時代は国際法を少し。数年間の堅い団体職の後、子供好きが高じて学習塾を、風が好きでスカイスポーツのイントラを、等と趣味と仕事が重なる生活を数十年経験しました。55歳引退計画に従って現在は基本的にフリーですが、相変わらずあれこれ忙しくしています。

生活方針は「無理をしないでゆっくりと」およそ中庸を好みます。東西を問わず古典思想の多くに心惹かれます。まずは価値相対主義を採用し事物の多様性を愛しますが、ミソとクソを同等にはしません。モノゴトには自ずと高低浅深があり、その判断基準は「大自然の摂理と全ての生命(いのち)の幸福」の中にあると思います。敬愛する人物は古今東西少なからず、良寛やB・ラッセルを含みます。

ナチュラリストと呼ばれることを好みますが、人間が創り出した道具類にも大きな関心を持ちます。人間語だけでなく、あらゆる生き物たちの「ことば」に興味が尽きることはありません。60~70年代ポップスや落語を聞いたりすることも好きです。

・著作:『空を飛ぶ・一つの方法』
・訳書:『リリエンタール最後の飛行』
・訳書:『個人と権威』

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