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寛太郎のカイト日誌

内容はカイトに限らず種種雑多です。好みの選択は「カテゴリー」をご利用下さい。日本語訳は全て寛太郎の拙訳。 2010年10月18日設置

   

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有難迷惑 (3)

ずいぶん前に「有難迷惑」の(2)まで書いた。起承転結の「起」の部分だ。今回からようやく「承」に入る。

改めて一般的に使われている意味を確かめようと思って、小学館の統合辞書で「有難迷惑」を引いてみたら、国語辞書には無いのに和英辞書には幾つかの用例と共に載っていた。少なくとも英語圏には同じような煩わしさを抱える人がいるらしい。いわく"unwelcome favour"、「歓迎されない好意」・・・最も使えそうな文は、"Thank you for nothing."「有り難いけど何の用にもならないよ」・・・だそうな。私は聞いたことも使ったこともないが、ハッキリものを言う英米人なら時々言いそうなことだ。

当人には「何の用にもならない」どころか「迷惑なばかり」の他人(ひと)の好意は、多くの社会人が日常しばしば遭遇することで、そう珍しいことではない。頼みもしないのに勝手にモノやサービスを与えようとする電話勧誘や訪問販売の類(たぐい)は最も分かりやすい有難迷惑だろう。もっともその動機が「好意」かどうかは大いに怪しいので、私はたいがいの場合、完全に無視する。

これだけ情報化が進んでいる時代だ。自分が必要とするものは自分の方からアプローチする方法を全く知らない人間など、極めて稀(まれ)なことは充分分かっているはずなのに、あんなバカげたことに大事な時間と労力を使わせる経営者はバカに大を付けてあげた方が良い。

ところが、これら日常世界の出来事と似たようなことは、かなり非日常的な「風読みの世界」でもしばしば起こり、まだその「社会的現象の基本構造」に理解が及んでなかった若い頃の私は、まったく余計なことをする人たちに腹を立てて噛み付くことさえあった。

その基本構造の本質は、要するに「無知」にあり、未だ社会的認知度の低い(多くの人が知らない)何かをする人間が、たいがい似たような経験をするのは、当然といえば当然のことだった。少しシャレた言葉を使えば、「あらゆる分野のパイオニアの宿命」と言っても良いだろう。

その一例は、パラグライダーが今ほど多くの人に知られていない頃のことだ。変な形をした飛行物体に人がぶら下がりながら山の林に降下するのを見かけた人がビックリしたらしく、「飛行機みたいなものが墜落した!」と警察や消防に救助通報をした。これはパラグライダーの世界ではよくある「ツリーランディング」で、これ自体で怪我をすることは自転車でこけて気絶するより難しい。高い樹から安全に降りる技術や機体の回収方法などは、その技能の初歩として一人前のパイロットはみな身に付けている。しかし、そんなことは何も知らない地元の住人が、これを「墜落事故」だと思ってしまったらしい。

私が木の上のサルになったよう気分で、のんびり機体の回収をしていたら、間もなく、ご苦労にも消防所の人たちが数人、息を切らしながら急な山の斜面を登ってきた。「お~い、大丈夫か~!」私の姿を認めても何も出来ず、何度も大声をあげる彼らに、まだ30代半ばで血の気の多かった私は少々イラついて「大丈夫なのは見たら分かるだろう!こっちに用はないから帰れ!」・・・と、まあ今の私ならまずしない無慈悲な言い方で追い帰した。大いにガッカリした彼らは、帰り際に「降りたら警察に寄って事後報告をするように・・・」などと言い残したが、こちらが頼んだわけでもないのに、そんな面倒くさいことをしなければならない義理はない。

国民の生命と財産を守るために、国民の税金で作っている警察や消防の組織制度は、国民から要請があればそれに応えるのが当然の職務義務で、この場合も当然のことを当然行ったに過ぎない。また、何も知らずに事故だと思い込んで通報した親切な人をとがめる理由もない。単なる「無知」が、私も含めて、それぞれの立場の人々の貴重な時間と労力と多少の税の浪費を招いた・・・という事実だけが残る。

同様のできごとは当然、まだまだ知る人の少ないカイトサーフィンにもある。ただ空と違って海の風読みスポーツは人目につく環境で行うことが多いから、その機会も多くなるのだろう。この4年ほどの間に、私は3回通報されて、一度などは海上保安庁のヘリが飛んで来たりしたこともあった。基本構造はパラの場合と同様。まったくご苦労なことだ。ただ、たぶん親切な通報者の方々には、とりあえず、もう少し落ち着いてじっくり事の成り行きを観察してから、ほんとうに必要なときに警察なり消防なり海保なりが活躍できる場を与えるように・・・と願っておきたい。

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プロフィール

HN:
寛太郎
性別:
男性
職業:
self-employed
趣味:
風読み・読書・自転車ほか多数
自己紹介:
瀬戸内の小島生まれです。学生時代は国際法を少し。数年間の堅い団体職の後、子供好きが高じて学習塾を、風が好きでスカイスポーツのイントラを、等と趣味と仕事が重なる生活を数十年経験しました。55歳引退計画に従って現在は基本的にフリーですが、相変わらずあれこれ忙しくしています。

生活方針は「無理をしないでゆっくりと」およそ中庸を好みます。東西を問わず古典思想の多くに心惹かれます。まずは価値相対主義を採用し事物の多様性を愛しますが、ミソとクソを同等にはしません。モノゴトには自ずと高低浅深があり、その判断基準は「大自然の摂理と全ての生命(いのち)の幸福」の中にあると思います。敬愛する人物は古今東西少なからず、良寛やB・ラッセルを含みます。

ナチュラリストと呼ばれることを好みますが、人間が創り出した道具類にも大きな関心を持ちます。人間語だけでなく、あらゆる生き物たちの「ことば」に興味が尽きることはありません。60~70年代ポップスや落語を聞いたりすることも好きです。

・著作:『空を飛ぶ・一つの方法』
・訳書:『リリエンタール最後の飛行』
・訳書:『個人と権威』

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