内容はカイトに限らず種種雑多です。好みの選択は「カテゴリー」をご利用下さい。日本語訳は全て寛太郎の拙訳。 2010年10月18日設置
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ジャンプを漢字にすると跳躍となるが、跳躍とは「跳び上がる」ことで「跳び下りる」という意味を含まない。カイトサーフィンのジャンプも、カイトの揚力や波の斜面やラインの張力を使って海面から空中に跳び上がるという動作で、着水に失敗して落ちるということはあっても、跳び下りるという感覚も意味合いもない。
しかし、ジャンプの原義には「跳び上がる」と「跳び下りる」双方の意味があり、後者のジャンプは、航空の先史から現代の様々なジャンプスポーツに至るまで非常に長い歴史を持っている。それはまたカイト(凧)と並んで、空を飛ぶことの出発点としても欠かすことのできない二つの要素であった。
紀元前2200年の昔、舜帝(※しゅんてい)は巨大な麦わら帽子2個の助けを借りて炎上する塔から脱出し、領地の上空を飛んだという。ただ、麦わら帽子は私もよくかぶるし大きいものは1m近くもある。だが、こんなものをいくら集めてもパラシュートの用は成さないだろうから、これは神話・伝説の域を超えない。
しかし、852年、スペインのアーメン・ファーマンが巨大な外套を着て高い塔から跳んで大怪我をしたという話は本当だろうし、その後多くの“勇気ある向こう見ず”が、両腕に様々な素材でできた羽のようなものを付けて高い所から跳んだことも事実だろう。
かく言う私も、小さい頃にこの種のジャンプを試みた一人だ。私の生家は小さな漁村にあり、目の前がすぐ砂浜になっていた。現在のように冷凍技術が進んでいなかったので、漁師たちが獲ってきた魚は市場に出す前に海中に浮かべた直方体の“生けす”に入れておく。私たちはこれを“ダンベ”と呼び、用済みのダンベは無造作に浜に並べてあった。これが結構大きなもので、横に立てると4mほどの高さになる。
この上から傘をさして跳ぶのである。下は砂浜だから怪我をすることはない。随分長い間飽きることもなく、このダンベからの傘さしジャンプで遊んだものだが、結局この程度のパラシュートでは落下速度はほとんど減衰されないということがよく分かった。
さて、1797年、史上初と記録に残るフランスのガーネリンのジャンプはもちろんこんな遊びではない。水素気球で一気に2000mまで上がり、そこからバスケットごと落下するというものだ。
その名も「大きな傘」。ベントホールが無いので乱流でキャノピーはかなり暴れまわったらしい。しかし、出発地点から1km足らずの地点に無事着地したというから凄い。とんでもない勇気と幸運だ。
しかし、私の興味はそれだけではない。フランス軍に従軍する前に物理学を学んだ彼がパラシュートジャンプに情熱を注ぐようになった切っ掛けが「フランス革命」にあり、敵軍の捕虜になって3年間捕らわれていたハンガリーの牢獄から脱出するために、その構想に没頭したという事実である。これは、ミノス王の追っ手から逃れるために、クレタ島の断崖から飛んだというダエダロス・イカロスの伝説に通じるものがあるだろう。
地上は王の領地つまり隷従を強いる領域、大空は神の世界つまり自由の領域・・・という考え方が、長い歴史を通じて人間の心理の深層に横たわっていることは否定できないように思える。
※舜帝(しゅんてい・中国古代の伝説上の聖天子。尭(ぎょう)と並称して「尭舜(ぎょうしゅん)」という)
※すでに50年以上前の1960年、米国空軍のジョゼフ・キッティンジャーがヘリウム気球で高度31330mまで上昇した後ジャンプし、5分近く落下(最大速度は時速988 km、毎秒274 m)したという記録もある。
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